第18回 介護タクシーの車窓でお花見

東京では4月前半の10日間ほど、今年も桜の開花を楽しめました。毎年のことながら、朝、出かけに桜が目に入ると晴れやかな気持ちになります。日々出かける私でもそうだから、普段外出できない人だと思いはひとしおだろうと思います。

患者さんご家族はやはりそう思われるようで、咲き始めの時期、介護タクシー車内では、「お父さん、ほら、桜が咲いてるよ」といった会話が聞かれました。それまで入院していた病院を退院し、別の病院にまた入院するための移送中の短い時間が、貴重な外出の時間であり、桜の開花時期に重なったら、うれしいに違いありません。

満開を迎えた時期、埼玉から都内の病院へ通院されるご夫婦を搬送しました。その日のルート上には、見事な桜の並木道があり、風に舞い散る桜吹雪は圧巻の美しさでした。「この風で今年の桜も終わりだね」と名残惜しそうな言葉も聞かれました。

中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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