第4回 関門、深視力検査

車いすのご利用者をご自宅から病院へ、あるいは老人ホームからご自宅へ、依頼を受けて搬送する。そんな介護タクシードライバーである私の二種免許取得の話を続けるにあたり、まずこの免許取得の際に行われるある視力検査について書こうと思います。

それは、深視力という検査です。文字通り奥行の視力、遠近感を調べる検査で、普通の視力検査に加えて行われます。やっかいな検査らしく、Sさんからも「難しい」と聞いていたため、私の中では二種免許取得の関門というイメージが出来上がっていました。

そんななか、前回書いたように都内某教習所の手違いで無駄足を踏まされた私は、せっかくなので深視力検査について取材することにしました。間違ってWEB受付をしてしまった責任者さんも、「やってみます?」と実際に検査を体験させてくれました。

検査は、右、左、真ん中と横並びになっている3本の黒い棒を見て行うものでした。それらは奥行きのある白い箱の中に設置されており、3本のうち中央の1本だけが稼動式で、検査を受ける私に対し遠近に(だんだん遠ざかり最奥まで行ったら折り返してだんだん近づく)動きを繰り返します。

そうして稼働する1本は、操作ボタンを押して止めることができ、左右の2本(私から同距離に固定されている)とできるだけ同位置で止める、というゲームみたいな検査です。止めた時の真ん中の黒棒と左右2本の黒棒のずれを一定範囲内にとどめられれば合格ですが、真ん中の黒棒は動いている時も見た目の大きさは変わらないので正確に遠近感を把握しないと成功しません。

なるほどこれが難関の深視力検査かと、実際に体験して仕組みを把握できたことで少し安心しました。責任者さんも好意的に、私が感覚をつかみやすいように、棒の速度を変えるなどして何度も検査を受けさせてくれ、いい練習になりました。最後には「眼鏡店に相談すれば深視力検査用の眼鏡も作れますよ」と。

その後私は、二種免許取得にこぎつけるわけですが、この時のアドバイスに従い、新宿西口のメガネスーパーで作った眼鏡で深視力検査を無事にパスしました。同店は、試験場で使われるのと同じ深視力検査機を設置しており、黒棒の位置にピンポイントでピントを合わせたレンズを作ってくれます。検査後はレンズを日常使いできるものに戻せ、免許更新時に再び深視力検査対応レンズに入れ替え可能です。間違いで足を運んだ都内某教習所ですが、まったくの無駄足ではなかったということです。
中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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