第8回 現場研修での学び

車いすのご利用者をご自宅から病院へ、あるいは老人ホームからご自宅へ、依頼を受けて搬送する。今でこそ普通にやっている介護タクシー業務も、仕事ができるようになるには、現場での研修が必要でした。私はSさんの弟子として3か月間、現場に同行しました。最初に同行したのは、ご利用者をご自宅から病院まで、付き添いのご家族と一緒に搬送する仕事でした。

自分で身体を動かせないご利用者を、お住いのマンション上層階から車いすにお乗せした状態でエレベーターで1階まで下ろし、そこでリクライニング車いすに移乗して車両に運び入れ、病院までお送りする仕事でした。文字にしてしまうとそれだけですが、ご利用者へのお声がけ、車いす内で身体を支えるクッションの当て方、車いすの動線、外気温との温度差など、気配りポイントが随所にあり、現場で見ないとわからないことばかりでした。

Sさんの仕事ぶりから多くの学びを得ると同時に気持ちが引き締まります。終了後、ご家族から感謝の言葉を伝えられ、この仕事のやりがいを実感することができました。
中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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