第21回 メーター検査時の整備モード

前回、介護タクシーも普通のタクシーと同じように距離、時間に応じて稼働するメーターが付いていると書きました。このメーターは、一定の走行距離ごとに加算される運賃を計算して表示する装置です。そのため、事業者はメーターが正確に稼働していることを確認する検査を毎年受け合格しなければなりません。

私も当然ながら、メーター検査を受けて開業したわけですが、車両を納車しくれた車屋さんから渡されたメーター検査説明資料の中に「新型プリウスの注意点」という1枚のコピーがありました。そこには、TRC(トラクションコントロール)を解除するために行う、スタートスイッチ、シフト、アクセルペダルなどの複雑な操作手順と回数が書かれ、一番下には大きな文字で「※上記操作を60秒以内に行う」と入っていました。

そのコピーは、もともとFAXで送られたものが何度も重ねてコピーされたような年季が入ったもので、さらに手書きで書き込まれた訂正がいくつもあり、漠とした不安を感じていまいました。何よりも私の車両はノアで車種が違っていたため、けっこうな緊張感を持って検査に向かうことになりました。

なお、あとで分かったことですが、検査は、車両は停まった状態ながら、タイヤは金属ローラーの上で回転するようにアクセルを踏んで行います。それは走行距離とメーターの稼働が正しいことを確認するためなのですが、ハイブリッド車は、何もしないとタイヤ空転を抑制するためエンジンが停止して検査が行えないため、事前にTRC解除を行い整備モードにする必要があるのでした。それが、先のコピーに書いてある複雑な操作というわけです。

さて、この整備モードにするための複雑な操作ですが、幸い検査時には、優しい検査官が「はいスイッチを2回押して」とか「次はアクセルを2回踏み込んで」などと細かく指示してくれたので、難儀することなく乗り越えられ、とてもありがたく感じました。

中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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