第2回 福祉輸送のためのタクシー

車いすのご利用者をご自宅から病院へ、あるいは老人ホームからご自宅へ、依頼を受けて搬送する介護タクシーの仕事を始めたきっかけを前回書きました。この介護タクシーという存在について、まだよく知らない人もいるでしょう。

介護と無縁なら、関心を持つことはないでしょうし、そのほうが幸せとも言えます。それでも、ある日突然、身にふりかかって自分事になるのが、医療であり介護です。私の身内も、年を取り、病気をし、医療サービスのお世話になり、介護タクシーを利用することになりました。こうした例は、今とても普通なのだと思います。

この介護タクシーについて、開業準備をしたことであらためて分かったこともあります。正式名称は、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業)。一般のタクシーと同じだけど福祉輸送に限定されるということです。

仕事を始めるには、二種免許の取得が必須。さらに一定条件を満たす車両、車庫、事務所、資金などを用意し、それらを運輸局に届け出、審査に通り初めて事業者となれます。私は、Sさんに紹介してもらった専門の行政書士さんにお願いし手続きをスムーズに済ませました。

一方で介護タクシーを始めるのに、取得が義務付けられている介護の資格はありません。それでも、介護の知識や技術を習得しておいたほうがよいので、多くの事業者が介護の基礎的な資格である介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などを取得しています。私も通学して取得したので、その話はまた別の回に書くことにします。
中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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