第9回 ノア福祉車両のスロープ

車いすのご利用者をご自宅から病院へ、あるいは老人ホームからご自宅へ、依頼を受けて搬送する、そんな介護タクシー業務を行う私は、前回書いたようにSさんの弟子として3か月間、現場での研修を体験しました。そんななか、Sさんから、車いすを介護タクシーに乗せる実技指導も受けました。車両はノア(トヨタ)の福祉車両で、車両後方開口部のスロープを下ろし、そこから車いすを乗車させる仕様です。

車いすの固定位置は助手席の後ろにあり、ご家族が座る運転席後ろの2列目シートの左側に収まるようにします。コンパクトな車いすなら簡単ですが、リクライニング車いすやストレッチャーなどサイズが大きいものだとうまく入れないと2列目シートとぶつかってしまいます。重量級のSさんを乗せた状態だと難易度はさらに上がり、固定位置まで押す練習を何度も繰り返しその感覚を養いました。

車いすの収納方法はハイエースだと電動リフトででき、現場の病院などで見ていてうらやましい気持ちになってしまうこともあります。それでもノア福祉車両も、油圧式で後部車高を下げスロープを緩やかにすることができ、車いすの乗り入れをしやすくすることはできます。備え付けの電動ウインチを使えばリモコン操作で車いすを引き上げられるので、力がなくても乗せることはできます。

もうひとつ考慮が必要なのは車室スペースで、ハイエースに比べるとノアは狭いため、使用機材のサイズの影響を受けます。座面の高い車いすに座高の高いご利用者が乗っていると収納できないことがあるため事前の確認は欠かせません。それでも見た目や乗り心地を理由に一般的な乗用車タイプのノアを希望される方もいらっしゃるので、そうした方々へのご要望にお応えしていかなければと思っています。。

中須譲二
介護タクシードライバー
東京・文京区を拠点に車いすやストレッチャーでの患者等搬送を行う介護タクシードライバー。東京消防庁患者等搬送事業認定、介護職員初任者研修、運転2種免許。前職は出版社の編集。
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